就労継続支援B型事業所「ひふみよベース天文館」は、10代から60代までの幅広い年齢層のメンバーさんにご利用いただいています。
利用に至ったきっかけも、特別支援学校を卒業されたばかりの方から、在宅での就労からいつか通所をして働けるようになりたいという方、働くことにブランクがある方、少しずつ生活リズムを整えていき、いずれは一般就労を目指したいという方など、本当にさまざまです。

天文館にある、居心地の良い事業所。
今回は、その中でもこの春に特別支援学校を卒業されたメンバーさんの取り組みについてご紹介します。
卒業後の一歩と、安心できる“はたらく”場所
特別支援学校を卒業し、ひふみよベース天文館の利用を始めてから、早くも4ヶ月が経ちました。在学中の実習を経て当事業所を選ばれ、卒業後は在学時と変わらず平日の就労を開始する形で社会人としての生活がスタート。
最初は緊張の連続だった毎日も、今では「楽しい」や「嬉しい」と感じられる場面が増え、新しいことに挑戦しながら、着実にステップアップしています。
やり取りの積み重ねと、社会とのつながり
利用開始当初は、在宅就労中のチャットでの連絡や作業のやりとりに少し戸惑いがあったご様子。自分から発言することや、どのようにテキストで質問すればよいかと緊張してしまう様子もありましたが、対面で通所する中で少しずつリラックスできやり取りがしやすくなっていきました。
もともとはお話し好きで、学校でもお友達が多かったという一面もあり、通所を重ねる中でその社交的な一面も少しずつ見られるようになっています。
最近では、チャットにてスタッフとの雑談を楽しんだり、困ったときには少し迷いながらもタイミングを見て相談しようとする様子が見られるようになってきました。
スタッフ側でも、必要に応じてアプリや文字起こしツールなどの活用を促し、本人が安心してやり取りできる方法を一緒に探しながら、日々のコミュニケーションを支えています。
最初は少し緊張していた通所も、今では少しずつリラックスし、自分のペースで過ごせる時間が増えてきています。
得意を活かして広がる世界、そして学びの時間
まずは、以前から得意だった書道を活かし、クラフトビールのラベル用の文字制作に挑戦しました。実習時から、横書きで書いてみたり、書体に遊びを加えてみたり、デザイン毛筆についてリサーチしながら、これまで経験したことのない書道の取り組み方を提案してみました。

デザイン毛筆という新しいチャレンジ。
その後、文字だけでなく、筆を活用したイラストにも挑戦したメンバーさん。与えられた果物や野菜のモチーフのテーマ、クラフトビールグラスの多様な形やクラフトビールの様々な色、そして白い半紙に白い泡を描く難しさなど、新たな発見の連続でした。

チャレンジは発見の連続。
「自由に描いていい」と言われると戸惑いを感じたため、「自由と言われると逆に難しいです」と正直に伝えたことで、スタッフから具体的な形や色の指示をもらい、より集中して取り組むことができました。

伴走しつつ、表現の最大化を共に。
他にも、社会人向けオンライン学習コミュニティを活用し、積極的に学びを深めています。「継続が楽しくなる朝習慣の作り方」や「話が上手とは?」といった社会人としてのスキルや知識に加え、「ガーナのカカオがチョコレートになるまで」など、自身の好きなことに関する動画も視聴し、好奇心旺盛に様々な分野の知識を吸収しています。また、体の調子が出ないときは、ストレッチや瞑想をすすめられて、体調を整えることも意識しています。
イラストに込めた探究心と形になった喜び
そしてこれまでに取り組んだイラストのひとつが、鹿児島県・長島町産の甘夏を使った季節限定醸造のクラフトビール「キラキラ甘夏」のラベルに採用されることになりました。
卒業前、自分の描いた文字が製品に使われたときもとても喜ばれていましたが、今回は文字+絵そのものがラベルになったこと、また初めての色を使用した取り組み、さまざまに悩みながらもチャレンジして制作した作品だったこともあり、よりいっそう大きな喜びを感じている様子でした。
こうした経験が、メンバーさんにとって自信にもつながっているようです。
これからの「自分」を見つける旅
特別支援学校を卒業し、社会に出てまだ数ヶ月。迷いや緊張がまだまだある中でも、「少しずつ、自分のやりたいことや自分らしい生活を見つけていきたい」と前を向く姿には、確かな成長の兆しが感じられます。
そして2025年8月1日には、これまでに取り組んだイラストがラベルに採用されたクラフトビール「キラキラ甘夏」が発売となりました。製品として形になった経験が、メンバーさんにとって今後の励みにもなっているようです。

自身が携わったプロダクトがついに!
今は、チャットでのやり取りや自分からの発信にはまだ戸惑いもあり、「聞いてみたいけど、次に会ったときでいいかな」と言葉を飲み込む場面もあるそうです。それでも、通所や作業を重ねる中で、雑談を楽しんだり、スポーツ観戦の話で笑顔を見せてくれたりと、徐々に“今の自分”を大切にしながら日々を積み重ねています。
これから関わる他メンバーとの交流や、新しいチャレンジを通して、もっと自分の世界がキラキラと広がっていくことでしょう。焦らず、でも確かに進んでいるその歩みを、私たちもそばで見守っていきたいと思います。
ご家庭で「卒業後の進路」や「自分らしく過ごせる場所」を模索されている皆さまにとって、今回の取り組みが少しでも参考になれば幸いです。ひふみよベースでは、ひとりひとりのペースや特性、お好きなこと・得意なことに合わせて、少しずつ「できる」を増やしていくサポートを大切にしています。
「通えるか不安」「どんな雰囲気だろう」といった疑問やご心配があれば、どうぞお気軽にひふみよベースまでお問い合わせください!見学や体験も随時受け付けております。